酒精:木天蓼
| ――いい天気。 洗濯当番の声がうるさいのは気に入らないけど、こういう天気は好きよ。 ずっと雨ばっかりで、あたしの自慢の毛もべったり寝ちゃってたものね。 久しぶりのお日様、気持ちいい。 あたしのひげの先っぽを押してくるみたい。 お天気のせいか、みんなうきうきしてる。 それに、もうすぐ港に入るって。 しゃんくす言ってたわね。 「楽しみだよなぁ。カッツェ」 まぁ、あたしは船を下りるわけじゃないんだけど しゃんくすが嬉しそうにしてたら、あたしも嬉しいわ♪ あたしは陸には近づかないの。 あたしは、ここにいる。 ここにいる限り、しゃんくすは必ず帰ってくる。 たとえ、何日離れていようと…… ベンがくっついていくことだけはおもしろくないけど、仕方ないわね。 一人にしとくと、しゃんくすは「糸の切れた凧」で「出たきり小僧」だそうだから。 しゃんくすをちゃんと連れて変える道具だと思えばね、 アイツにも価値はあるってもんよ。 そのたんびに、しゃんくすにいっぱい自分の匂いを付けてくるのは腹が立つけどね。 ……いいのよ、そのうちぎゅうという目に遭わせてやるんだから。 さぁ、せっかくのいい天気なんだし。 久しぶりに船倉に下りてみようかしら。 ネズミが増えてるかもしれないわ。 あいつらときたら、食料だけじゃなく船板やロープまで囓るんだから。 でかいのが取れたら、しゃんくすにもあげるわね。 しゃんくすがいくら上手にカトラスを使うといっても、ネズミ取りはちょっとね。 あたしがしっかりしなきゃ。 うん、異常はないわね。 水も食料も、オーケー〜 …なぁに、この瓶?うっすら色が付いてて、これだけ匂うってのは… 水じゃないけど、お酒にしては変な匂いよねぇ。 だって、あたしはお酒なんて大キライなのよ。 あ、しゃんくすが飲むのは別よ。 飲むと彼、かわゆくなるんだもの♪ そりゃ、いつだって可愛いけど。よりいっそう可愛いの! キライなのよぉ、お酒なんて。 なのに、どうして離れられないのかしら、コレから。 だめよ、こんなの。舐めちゃダメ。 あぁん、どうして止められないのよぉ。 あら……なんだか足下がふわふわするわねぇ。 この床、腐ってんじゃないのぉ。 もうちょっと固い床に行こ。甲板なら、大丈夫よね。 「カッツェ、いいところで会った」 あら、ヤソップ。なに? 「ちょっと話があるんだが、今いいか?」 いいわよ〜なんだか気分がいいんだもの。聞いてあげるわよ〜 なんなのお〜 「つまり、その、な」 なにが「な」よ。何が言いたいの。 「つまりだ、人間には羞恥心てやつがあって」 なによ、それ。 「つまり、その羞じらいってゆうか、今見ちゃイヤというか…」 しゃんくすは別に恥じらったりしてないわよぉ。 裸でいたって、服着ていたって、しゃんくすはしゃんくすよ。 裸の人間なんてメチャみっともないもんだけど、しゃんくすだけは別よ。 「お頭は別だ。ありゃ人間てより…」 なーに?てより、何? 「い、いやお頭は、ほら並の人間じゃないだろ」 ああ、そりゃそうよね♪で、並の人間はなんだっての? 「まーその、普通の人間には、だ。 その、あんまり人前ではしたくないこともあるわけだ」 ふうん、食べ過ぎておなか壊した時みたいなもんかしら。 確かに、ああいう時はあんまりうるさいとイヤよね。 「だろ?で、だ」 「ここんとこ、おまえさん、ずーっとお頭にひっついてるだろ?」 そうよ。だって、気を許したら、すぐベンが来るんだもの。 「その副船長なんだが、 奴さんが来たら、ちっとは遠慮してやったらどうだ」 なによ、遠慮って? 「つまり、その席を外してやるとかいう気は」 冗談!どうしてあたしが! 「無い…みてえだ、な」 当然よっ。あそこはあたしの部屋。しゃんくすはあたしのものよ。 なんだってあたしが、あたしの部屋から出て行かなきゃなんないのよっ! 「おい、落ち着けよ、カッツェ」 落ち着いていられますかーー あら?、あら?なに?どうしたの? ヤソップ、あんた3人いるわよ〜〜〜 「おい、カッツェ。大丈夫か」 ヤソップの声が遠くからゆらゆら聞こえる。 大丈夫なわけないじゃないのーー ものすごく気持ちいいブラックアウトと最悪の目覚め――― これって、セットになってたのね。 毛繕いしようとするたび、頭ががんがんする。 こ、このあたしが寝癖がついた毛をしゃんくすに見られるなんてーー 屈辱だわっ! 「災難だったな、カッツェ」 言わないでよぉ。ああん、シャンクスに笑われるなんてぇ。 おまけになに!この臭い! ベン、あたしが潰れてる隙に、入り込んだわね。 部屋にもしゃんくすにも、ベンの臭いがぷんぷんする! 不覚だったわ、ああ、しゃんくすから離れるんじゃなかった。 もうもう、二度とこんな失態は晒さないんだから。 安心してて!しゃんくす。 いい気になるんじゃないわよ!ベン! 次はないわよっ!!! |
| 2001.10.21 |
| ☆ 猫と語るヤソップ……メルヘンだと思ってください。 これは『微睡』の裏話。 なぜ、あの時に限ってカッツェが邪魔しに来なかったかというお話です。 ホント、なんで邪魔しなかったんだろうと、私も色々考えてたのですが サイトの常連のTさんが「○○○酒」と叫んでくれたので、あっさり決まり〜 ありがたやありがたや♪はい、木天蓼はマタタビと読みます。 |
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